浜中明
Vol.2/2006年3月8日

連載二回目の今日、私は三十回目の誕生日を迎えた。
いよいよ三十歳、オヤジの仲間入りである。

論語には、「三十にして立つ」などとあるが、実際には身体のある部分がだんだん立たなくなるなど(さっそくオヤジギャグ炸裂である)、老化の兆候が見えてくる。
私の場合、最近、実に物忘れがひどい。

先月、若木先生も似た事を書いていらしたが、私も負けず劣らずの健忘症である。
買い物に行って何も買わないで帰ってくる、なんてのは日常茶飯事。ぼーっとスーパーに行って何となくぶらぶらして、何も買わずに店を出てしまう。帰り道の途中で気づいてスーパーに戻ると、そもそも財布を忘れていたりする始末だ。
また買い物に自転車で行くと大抵歩いて帰ってくる。結局自転車を取りに戻って都合二往復することになるので自転車を使うのをやめた。これなら一往復で買い物が済む。これぞ合理主義である。デカルトが聞いたら卒倒するかもしれないが。

ちなみに、我が家ではちょっとした買い物などはもっぱら私の仕事なのだ。まあ嫁からすれば在宅業で一日中家にいる夫などパシリ同然というわけ。さだまさしさんも『関白宣言』の後に『関白失脚』を歌っている。悲しいかなこれが結婚の現実である。

と、私のうだつの上がらない愚痴は置いておくとして、物忘れの話。人や物の名前が出てこないことも実に多い。いわゆるど忘れである。
映画が好きでよく観るのだが、ある映画のタイトルをど忘れして「ジーン・ケリーが『雨に唄えば』を歌う映画ってなんだっけ?」と人に聞いたことがある。相手もずいぶん驚いたことだろう、その映画は『雨に唄えば』なのだから。

この手のど忘れではさらにひどい話がある。
ある朝、嫁に声をかけようと思ったが、彼女の名前をど忘れしてしまったのだ。なんと呼んでいいか分からず、口をついて出た言葉が……

「お前、だれだっけ?」

嫁は凍り付いていた。
朝、夫の第一声が「お前、だれだっけ?」である。ちょっとしたサイコホラーといえよう。

と、まあこんな私なのだが、今回の連載では伏線を張ったまま忘れたりしないように気をつけたい。
これを読んで不安になる中道先生の顔が目に浮かぶ…… と思ったが、どうも顔が思い出せないようだ。


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